「こだわりと割り切りの間で・・・」
  敷地は東京都町田市玉川学園の閑静な住宅地の一角である。施主はグラフィックデザイナーとテキスタイルデザイナーの夫婦とご両親の二世帯住宅である。
 この住宅は「自分達は社会的地位もレベルも低い(決してそんなことはないが・・・)、だからリビングに招く客というのはないし、昼間はほとんどいないから、8帖の居間にシャンデリア、応接セットとは縁遠い。」という割り切りから出発した。自分達の 生活をしっかりシュミレーションできている施主のため、計画を進めていく上で、しばしば文化論に至るほど打ち合わせに熱が入った。割り切りから出発したため、その分のエネルギーを生活へのこだわりに存分に注ぐことができたように思う。
 プランニング上はリビングともダイニングともキッチンともつかない大きなたまりばが中心となり、ここで大きなテーブルを囲み4人の大人がそれぞれのプライバシーを保ちながら、生活を繰り広げる。

No.2

玉川学園の家

敷地面積

385.14平方メートル(116.50坪) 

建築面積

89.35平方メートル(27.02坪)23.19%

延床面積

128.94平方メートル(39.00坪)33.47%

竣工

1992年月 竣工
掲載雑誌
モダンリビング 1993年No.91

 

 「建物は風景に溶け込み、都市は風土になじむ。」というのが私の設計の大前提である。生活を風景に取り込ませるため、太陽の動きにあわせて、45度折り、午前中は広縁で新聞を広げ、午後はできるだけ長くたまりばに太陽の光が入るよう考慮した。また、緑が周囲に多く自然が豊富なため、自然の光と風を感じながら、一年中生活できるよう外壁通気工法を使用した。その割にローコストに短期間ででき、住宅金融公庫使用という家である。
  鳥の鳴き声が響く“閑静な”住宅地とは一見聞こえはいいが、施主夫婦にとっては“閑静な”が“退屈な”になるらしい。そこでしばしば文化論に至るが、流行に近い部分で、仕事を続けてくると、またビジネスで人に文化を与え続けていると、普段の生活では受け身サイド(受動的)にまわりたくなるらしい。
  これから施主は退屈な、そして生産的な生活を休日に過ごすことにより、また違う文化をビジネスで見せてくれるのではと期待している。

 

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